われわれの身近に存在する『電気』。現代社会ではなくてはならない存在となっています。
学校や職場、パソコンやインターネットなどありとあらゆるものが『電気』と結びついています。
電気は私たちにとって貴重なインフラになっています。しかし、そのインフラは、あたりまえのようにわたしたちに供給されています。
もし、この電気というインフラの供給が止まってしまったらどうなるでしょう。「電気がなくなったら」「電気がなかったら」・・・。
そうならないために社会には電気のメンテナンスや施工のプロがいるのです。電気工事関連の資格を持った人たちが電気のある暮らしを提供し、支えてくれているのです。
この記事では、その電気工事関連の仕事内容や資格について詳しく紹介していきましょう。
電気工事ってなに?(電気工事の定義)
電気工事とひとことで言っても様々な種類があります。一般には建設工事の中で、送電線、配電盤、電灯、電力の機器などの電気工作物の工事を専門的に行う工事のことを言います。
同じ電気工事と言っても、役割分担によって仕事内容が大きく変わるのです。工事が大きくなればなるほど、その役割分担を担う人々が必要になってきます。
電気工事士法第2条第3項に書いてある定義には、
とあります。
なにやら難しい文面ですが、要するに電気工事をすることに関しては、原則として『電気工事士』でなければ工事できないと言うことです。
しかし、上記にあるように「軽微な工事を除く」とあります。では、軽微な工事とはどんなものがあるのでしょう。
電気工事士法はすべての電気に関する作業を規制しているわけではなく、たとえば電球を交換したり、ソケット(差し込み口)に小さな機器を取り付けたりと言ったものは『軽微な工事』として除外されているのです。
電気工事士法施工令第1条に定められているもので言うと、
- 600V以下のプラグなどの接続器またはナイフスイッチなどの開閉器に、コードまたはキャプタイヤケーブルを接続する工事
- 600V以下の配線器具を除く電気機器または蓄電池の端子に、電線(コード、キャプタイヤケーブル、およびケーブルを含む)を接続する工事
- 600V以下の電力計、電流制限器、またはヒューズを取り付け、取り外す工事
- 二次電圧が36V以下の小型変圧器の二次側の配線工事
- 電流を支持する柱、腕木などを設置、変更する工事
- 地中電線用の暗渠、管を設置、変更する工事
とあります。
ポイントは『600V以下』ということです。照明機器の取り換えやエアコン(一部のみ)などの取り付けなどが法律から除外された工事だと言えますね。
壁の中まで関わる工事は法律で規制されていると考えていいと思います。
電気工事の種類とその資格
では、その電気工事関連の資格とはどんなものがあるのでしょう。
資格には、
- 電気主任技術者
- 電気工事士
- 認定電気工事従事者
- 特殊電気工事資格者
- ネオン工事技術者
- 電気通信設備工事担任者
などが挙げられます。
ここではよく耳にする『電気主任技術者』と『電気工事士』について述べていきます。
電気主任技術者
電気主任技術者とは、事業を行うための電気工作物(変電・送電・配電など)の工事や維持・運用を保安し、監督をさせるために、設置者が置かねばならない電気保安の責任者のことを言います。
また、事業の規模によって第一種、第二種、第三種の資格免許を持っている者を選出しなければなりません。
電気主任技術者の資格は、取り扱う電圧によって種類が分けられています。
- 第一種 すべての事業用電気工作物
- 第二種 電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物
- 大三種 電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)
とあります。
つまり、電気主任技術者というのは工場やビルなどにある電気設備に関して、工事・保守・運用などの監督者として有資格者が従事している人のことをいいます。
主な仕事内容としては、所管官庁に提出する書類に関して関係のあるものに関してはすべて参画したり、所管官庁の法令に基づく検査や審査の立ち合い。
電気工作物の工事に対する監督業務など、様々な業務が要求されます。いわゆる“電気関係のなんでも屋さん”といったところでしょう。
電気主任技術者になるためには、『電気主任技術者試験』を受験し、資格を得なければなりません。
試験は「理論・電力・機械・法規」の筆記試験で、3年間で4つの試験に合格する必要があります。
難易度に関しては、後に述べる『電気工事士』と比べるとはるかに難易度が高く、先に述べたように「理論・電力・機械・法規」の4科目の試験があり、試験範囲も膨大です。しかも過去問題と同じ問題はほとんど出題されません。
しかしその分責任は大きいいですが非常にやりがいのある仕事だと言えるでしょう。
あまり表舞台には立たないしごとではありますが、年次点検や欠時点検で不具合を発見し問題を解決できた時の達成感はかなり充実するものがあるでしょう。
電気工事士
電気工事士とは、電気工事の作業に関して従事するために、電気工作物に関する専門的な知識と技能を持っている有資格者のことを言います。
電気工事士法の定めによって、原則として電気工事士の資格を持っている人でない限りは、一般用電気工作物や500kw未満の自家用電気工作物の工事に従事することはできません。
これに違反した場合、懲役または罰金の規定があります。電気工事士には二種類の分類があります。
- 第一種電気工事士
- 第二種電気工事士
と分類されています。
第一種電気工事士は、500kw未満の自家用電気工作物、いわゆる中小規模の工場やビル、高圧受電の商店の工事に従事することができます。
また一般用電気工作物という一般家屋や小規模商店、600v以下で受電する電気設備などの工事に従事することが可能です。
一方で第二種電気工事士は、第一種電気工事士に比べ工事に従事できる範囲が狭く、一般用電気工作物の工事のみに従事することができます。
電気工事士になるためには、第一種ならば『第一種電気工事士試験』を、第二種ならば『第二種電気工事士試験』を受けなければなりません。
第一種の場合、電気主任技術者の資格保有等によって筆記試験は免除されます。
しかし免許交付には試験に合格後、資格を取得したという証明となる免状を交付する手続きを行う必要があります。
これには2つの条件があります。
- 電気工事士実務経験5年以上
- 電気工事士実務経験3年以上+大学または専門学校で所定の過程を修め卒業していること。
とあります。しかも、免状取得に必要な実務経験の内容も重要になってきます。
下記にその実務経験の内容を記します。
出典:電気工事士.com https://koujishi.com/denkikouji/20/#index_id6
上記3つの実務経験が必要とされています。
第一種電気工事士は、より難易度の高い工事をすることが可能ですので、その分充分な実務経験が必要になってくるわけですね。
一方で第二種電気工事士のほうはどうでしょう。
第二種電気工事士にも筆記試験の免除はあります。工業高校電気科卒業や専門学校、大学などの認定校の科目取得による卒業や、電気主任技術者の資格保有によって免除されます。
学科試験方式は、第一種・第二種ともにマークシートを使用しての四肢択一方式で行われます。
問題数は各50問で、内訳は一般問題30問、配線図題20問となっています。電卓及び計算尺の使用は認められていません。
試験は、一般財団法人電気技術者試験センターが実施します。
第一種は年1回、第二種は年2回です。第一種、第二種ともに筆記試験と技能試験があり、技能試験は筆記試験合格者または筆記試験免除者が受験することができます。
試験日は、
第二種電気工事士:上期…筆記試験6月、技能試験7月
下期…筆記試験10月、技能試験12月
となっています。
資格取得の難易度について
ではここで、第一種電気工事士と第二種電気工事士の試験難易度を比べてみましょう。
平成18年度から平成26年度までの合格率を見てみます。
出典:電気工事士の資格保有者が語る合格・独立 https://denkikoujishi-shikaku.com/1to2.html
このグラフを見ると圧倒的に第一種の難易度が高いのがわかります。
第一種の場合は約3人から4人にひとりの合格率なのに対し、第二種は約2人に一人が合格しています。これによって大きな難易度の違いが見てとれます。
参考に他の国家試験の合格率も見てみます。
建設業・電気関連の資格
- 二級電気工事施工管理技士…20パーセント台
- 第三種電気主任技術者…7~8パーセント台
- 消防設備士…30パーセント台
- インテリアプランナー…20パーセント台
その他の国家資格
- 日商簿記3級…40パーセント台
- 社会福祉士…20パーセント台
- 社会保険労務士…7~10パーセント台
このように見てみると、電気工事士は比較的難易度は「中間~やや難しい」程度になると思われます。
資格によっては受験資格が異なっていたり、受験内容が違うなど、合格率だけですべては判断できませんが、一つの目安にはなると思います。
また、受験者の年齢層が幅広いことも難易度に関係する可能性があります。
第二種においては年齢層が幅広く、これから電機業界へ就職を目指す未経験の人や、幅広い分野での資格取得を目指している人など様々です。
しかし、電気工事士は決して難攻不落な砦ではありません。事前にきちんと準備や対策ができていれば合格できるチャンスが十分にあります。
電気工事関連の需要について
さて、電気工事関連の種類や資格などを詳しく説明してきましたが、では電気工事関連の仕事の需要とは今後も含めどのような状況なのでしょうか。
ここでは先に述べた『電気主任技術者』と『電気工事士』について説明していきます。
2030年には電気主任技術者が約2000人不足
電気主任技術者においては、2030年には電気主任技術者が約2000人不足すると言われています。
経済産業省は東日本大震災以降、原子力を除く電気関係の保安の在り方や規制の具体的内容の審議を行う「産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会電力安全小委員会」というものを設置しました。
この小委員会で電気保安や工事を担う人材の確保問題が2015年に議題に上がりました。
経済産業省によると有資格者が必要な設備は毎年0.6パーセント増加傾向にあって、今後もその増加傾向は続くと言われています。
それに対して有資格者不足が懸念されていて、特に第三種電気主任技術者が2030年に約2000人不足するという驚きの数字も出ています。よって電気主任技術者の需要は今後も拡大していくでしょう。
2010年代から需要拡大する電気工事士
電気工事士においては、2010年代に入ってからは、震災や東京オリンピック開催に伴う建設関係工事の増加もあって建設業界の需要は拡大しつつあります。
それに伴って電気工事関係の需要も高まっていて、人材を確保しようという動きが出始め、活発化してきています。
バブル時代のような建設ラッシュはないものの、今後もなくならない業界・仕事であることは確かです。
保守・保安という部分においても充分需要はあると言えます。さらに細かく言うと、電気工事士の活躍できる場は建設工事だけではありません。
例えば『自動車工場』で例をあげてみると、自動車は勝手にできるものではなく、『自動車を作る設備』が必要になってきます。この設備に不具合が起きたり故障が生じてしまうと生産することができません。
それを防止するために工場には常駐する保守部門が存在します。
そこでも電気工事士の有資格者や工事経験を積んでいる人が活躍しているのです。
さらには鉄道会社の電気工事や防犯設備の設置の仕事、情報通信関係の工事やビルの設備メンテナンスなどその内容は多岐にわたります。
まとめ ~あたりまえの笑顔のために~
これまで、電気工事の定義から資格取得までを紹介させていただきました。
『電気』はわれわれの生活にはなくてはならないものです。まさに文明の利器と言えるでしょう。
電気工事関連に興味のある方や、将来電気関係の仕事に携わりたいと思っている方、まずは自分に見合った電気工事関連の資格や免許取得を目指してチャレンジしてみてはどうでしょうか。
決して電気工事関連の仕事は華やかな表舞台には出ない職業です。
しかし、その分やりがいはあります。家庭や職場に「あたりまえの笑顔」を届けられるように日々努力している有資格者がたくさんいます。しかしその資格者の方が年々不足しているのも残念ながら事実です。
さらに電気工事関連は努力次第独立することも可能です。電気工事の場合で言えば自営業や法人事業主として働く選択肢もあるのです。
企業に雇われて安定した収入を得ることもできますが、「収入をもっと増やしたい」「独立してキャリアアップを目指したい」など将来明確な目標を持っている人なら独立開業も選択肢としてアリだと思います。
最後に、たくさんの「あたりまえの笑顔」を守っていける電気工事関連の仕事に従事する人が増えていくことを心より願っています。