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人気の建築業界で”建築士”として働くには?試験と免許、令和の新しい建築士制度

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『家』それは私たちの生活の中で、最も身近であり大切な場所です。
また、学校や職場、レストランやスーパー、病院や野球場など、私たちの日常の中のいたるところにある建物。

雨風や暑さ寒さから人々を守り、快適で安全な社会生活を送るために、現代人の生活からは切り離すことができません。

そんな建物を設計・建築するのが建築士の仕事です。 建築士には、一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があり、その資格によって、設計可能な建物が異なります。

それぞれの建築士試験に合格し、免許を持っている人のみ建築士として働くことができます。
建築業界で働く際に必須の資格・免許であり、職業自体を表す名称としても用いられる”建築士”。

この記事では、その特徴や資格取得、免許登録のために必要な条件などについて詳しく紹介していきましょう。

建築士は3種類ある


冒頭でご紹介した通り、建築士は3種類(一級建築士、二級建築士および木造建築士)に分類されます。

また一級建築士の中には、さらに構造設計一級建築士と設備設計一級建築士があり、これらの建築士が求める場合必要に応じて助言をする建築設備士という資格も、建築士法に基づく国家資格となります。

なお、建築士事務所の開設の際には、その事務所を管理する専任の建築士の配置が義務付けられており、これを管理建築士と呼びます。

このように建築士と呼ばれる資格は複数存在しますが、一般的に『建築士』という言葉が指すのは、一級建築士、二級建築士、木造建築士です。

この3種類の建築士について、まずはそれぞれの特徴を見ていきましょう。

一級建築士

一級建築士の最大の特徴は、”設計する建物の規模や構造に制限がないこと”です。

一級建築士は、一般的な戸建て住宅から、公共施設や商業施設、オリンピックの競技施設に至るまで、様々な建築物の設計に携わることができます。

ただし、現在では一級建築士の資格取得後すぐに大規模な設計を行うことはできません。

耐震問題等の影響により、平成18年に建築士法が改正され、平成21年から構造設計一級建築士、設備設計一級建築士という資格が創設されました。

一定規模以上の建築物(延べ面積が500平方メートル以上の学校や病院、または3階建以上の木造建築物等)の設計、建築、増改築の際には、一級建築士だけでなく構造設計一級建築士、設備設計一級建築士の資格保有者の関与が義務付けられています。

つまり、構造設計・設備設計一級建築士の資格を保有していない一級建築士の場合、一定規模以上の建築物の設計に携わる際には、上記の資格を保有している他の一級建築士による法適合確認を受けなければなりません。

二級建築士

二級建築士は、一級建築士に比べ、設計可能な建物の規模や構造に制限があります。

木造建築物の設計であれば3階建てまでとなり、高さが13メートル、軒高が9メートルを超える建物の設計はできません。

また延べ面積は1000平方メートル以下でなければなりません。

これらの条件からわかるように、二級建築士の主な仕事は一般的な戸建て住宅の設計となります。

そのため、二級建築士はその家に住む人の暮らしやすさやライフスタイルまで配慮した設計の提案が必要となり、建築の知識だけではなく、実際に住む人との関わりや思いやりなども大切になります。

なお当然ながら一級建築士も二級建築士と同じ規模の建築や設計が可能であり、どちらも高度な知識が必要となることに変わりはありません。

より高い知識や専門性を持って設計を行うため、住宅専門の建築家でも、最近では一級建築士を取得している人も増えています。

木造建築士

木造建築士は、一・二級建築士よりも木造建築に特化した高い専門性を持った、木造建築におけるスペシャリストの資格です。

設計できる建物の規模や構造の制限は二級建築士よりもさらに厳しくなりますが、実際の仕事内容に大きな違いはありません。

設計が可能な建物は、2階建て以下、かつ述べ床面積が300平方メートル以下の木造建築となります。

一般的な住居の場合は上記条件に当てはまることが多く、また条件内であれば公共施設の設計に携わることも可能です。

建物の設計だけでなく、工事関係者の管理や将来そこに住む方々との関わり、インテリアや家具の配置設計など、木造建築士の仕事には現場での幅広い対応が求められます。

建築士試験と免許

一級建築士、二級建築士、木造建築士は、全て国家資格であり、資格を取得するには年1回行われる建築士試験に合格する必要があります。

建築士免許登録者数(試験合格と免許登録の違いについては後述)は平成31年4月1日時点で一級建築士:373,490人、二級建築士:771,246人、木造建築士:18,133人となっています。

一級建築士が国土交通大臣からの認可を受けるのに対し、二級建築士・木造建築士は各都道府県知事からの認可を受けて免許が発行されます。

建築士の免許を持たない人は、延べ面積が100平方メートルを超える建物を設計、建築してはいけません。

そのため、たとえ自分の住む家であっても、免許を持たない人が設計や建築を行うと犯罪行為となり、違反者は罰せられ、違反建築物には取り壊し命令が出されることもあるので注意が必要です。

難易度

これまでの説明から、建築に携わる職業を目指している人にとって、建築士試験の合格が必須であることがお分かり頂けたかと思います。 ではその難易度はどれくらいなのでしょうか。

建築士試験の試験項目は、二級・木造建築士試験については4種類2つの学科試験と設計製図試験、一級建築士試験については5種類3つの学科試験と設計製図試験により構成されます。

学科試験に合格し設計製図試験に不合格の場合、その後2回まで学科試験が免除されます。

合格率は、一級建築士で10%前後、二級建築士で20%前後、木造建築士で40%前後となっています。

学科試験よりも設計製図試験の方が合格率が高いことが特徴です(上記データは学科試験と設計製図試験の総合合格率)。

ただし、建築士は受験資格自体の条件が高いので、すでに知識や経験のある受験者の合格率となるため、一般的な国家資格に比べると難関であると言えるでしょう。

受験資格

それぞれの建築士試験により受験資格が異なり、また受験者の学歴等によっても条件が変わります。

ここで注意して頂きたいのが『建築士試験の合格』と『建築士免許の登録』の違いです。

建築士においては、試験に合格した段階で免許が登録されるわけではありませんが、当然ですがそもそも試験に合格しないことには免許の登録はできません。

まずは試験を受験するための資格要件から見ていきましょう。

なお、以下で説明する大学等の学校類では、国土交通省の定める建築専門科目を履修したことを条件とします。

建築士免許の登録

上述したように、試験に合格するだけでは建築士として名乗ることはできません。

無免許で建築や設計を行うと建築士法により罰せられます。

建築士免許を取得するためには、建築士試験の合格に加え、全ての一級建築士、一部を除く二級・木造建築士において、下記に記載する年数の実務経験が必要となります。

構造設計・設備設計一級建築士免許登録要件

「構造設計(または設備設計)に関わる業務経験を5年以上持つ一級建築士、かつ、構造設計(または設備設計)一級建築士講習を受講した後、修了考査の合格後に構造設計(または設備設計)一級建築士証の交付を受けた者」

※設備設計一級建築士において、一級建築士に加え建築設備士の資格を有する場合は、4年以上の設備設計に関わる業務経験があれば受講可能となります。

令和の新しい建築士制度

これまで建築士の特徴や資格試験についてご説明してきましたが、今年度(令和2年)から建築士法が改正され新しい建築士制度が始まります。 時代とともに多様化するニーズに対応するために、建築士は常に進化し続けているのです。

これから建築士試験を受験する人にとって、有利になる特に重要なポイントを2点ご紹介します。

実務経験

受験資格の項目で上述した通り、一級・二級・木造建築士の免許登録には、建築士試験の合格と一部を除く場合の実務経験が必須です。

今回、令和2年3月1日の建築士法の改正(以下、改正建築士法)により変更となったのが、この実務経験のタイミングです。

これまでは、実務経験における所定の年数を経過してからでなければ建築士試験の受験ができませんでしたが、今後は実務経験の有無に関わらず、学生の場合、卒業後すぐに試験の受験が可能です。

ただし、合格した場合でも、免許の登録には実務経験が必要である点には変更がないので注意して下さい。 改正建築士法により、受験者にとっては有利な条件となりました。

具体的には、建築に関する科目を履修した大学卒業後、実務経験を積む前に一級建築士試験の合格を目指すことなどが可能になります。

また、大学・短期大学・高等専門学校で建築を学び卒業した後、二級または木造建築士の資格試験に合格した場合、実務経験なしに二級・木造建築士としての免許登録をした後に最短2年の実務経験を積み、一級建築士試験の合格を経て一級建築士の免許を取得することができます。

また、この実務経験に含まれる経験の内容についても、改正建築士法により多くの実務が追加されました。

これにより、実務経験として認められる内容の幅がかなり広がったことも、受験者にとっては大きなメリットと言えます。


出典:国土交通省新しい建築士制度の概要(パンフレット

学科試験の免除期間

改正建築士法において、2つ目の受験者に有利な変更点は学科試験の免除期間が延長されたことです。

これまでは、学科試験に合格した場合、翌年・翌々年までの学科試験が免除されていました(学科試験の合格有効期限は3年)。

改正建築士法により、この免除期間が合格試験後の4回先まで有効となります(有効期限は5年)。

ただし、学科試験合格後の4年間、毎年免除で4回の受験ができるわけではなく、4回の試験のうち学科試験の免除を受けることができるのは2回までとなります。

つまり、免除の回数は以前と変わらないものの、学科試験合格後から2年連続である必要はなく、4年後までの受験において2回の学科試験が免除されることになりました。

なお、この制度は改正建築士法の制定(令和2年)以降の学科試験合格者のみの適用となるため、令和元年以前の学科試験合格者の免除有効期限は3年のままなので注意して下さい。

建築士の知識や経験を活かせる今注目の職業

さて、これまで建築士の資格について詳しく説明してきましたが、実は建築士以外でも活躍する一級建築士の資格保有者が近年増えてきています。

建築士として現場経験を積み、その知識と経験を活かして、地方自治体や民間企業の経営管理者として転職することも可能です。

また、国際規格の建設に携わるグローバルな視野を持ち、世界で活躍することも夢ではありません。

もちろんそれぞれに必要な資格をさらに取得しなければなりませんが、建築士としての知識や経験を活かしてキャリアアップするという選択肢を、最後に一つご紹介しておきます。

ファシリティマネジメント

Facilities Management (略称:FM)は、アメリカで生まれた新しい経営管理方式です。2018年にIOSより国際規格として定義され、近年注目を集めています。

ファシリティマネジメントとは、施設や設備を管理・経営・運営するという意味ですが、ここには、日本の建物に対する伝統的な考え方が、今大きな転換期を迎えているという背景があります。

これまで、ファシリティ=施設や建築物は、不変的なものとされ、保全や維持を目的とした経営が行われてきました。

しかし、耐震や環境問題などを考慮した、省エネルギーで快適な社会生活を目指す”より良いあり方”を追求する考え方が広まっています。

日本ではまだ認知度が低く、人材育成に課題のある業界とされていますが、欧米ではすでに人気があり、高収入が見込める業業となってきています。

このような新しい視点から、建築士の建築物に対する知識や経験を活かして、経営者として働くキャリアアップも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

まとめ 〜建築士の免許取得を目指そう〜

私たちの生活を支える大切な職業であり、魅力的な”建築士”についてご紹介しました。

建築について興味がある方や、将来建築業界での就職や独立を考えている方、知識や経験を活かしてキャリアアップしたい方は、まずは自分に合った建築士の資格・免許取得を目指してチャレンジしてみて下さい。

自分の設計・建築した建物が街の一部となり、長い間多くの人に役立ち、愛される場所をつくる喜び。

そんなやりがいを感じ、たくさんの人々の笑顔を生みだす建物をつくる建築士が増えていってほしいと願っています。

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